Mobile Tech Lab vol.020|スマホ新法でどう変わる?

2025年8月17日にBAYFM78で放送された、Mobile Tech Labの第20回のアーカイブです。

今回は2025年12月から始まる「スマホ新法」について話しました。

オープニング

まだまだ暑い日が続いてますけれども、お二人は暑い時に食べたくなるものは何がありますか?

暑くなって食欲はだいぶ減るので、本当に月並みですけど、やっぱそうめんになっちゃうのかな?っていう。

北さんは?

僕はあえて辛いもの・熱いものを食べたいので、カレーとか麻婆豆腐とか。暑い時こそ。

私は最近コンビニのきゅうりにハマっており、一本漬けのきゅうりを朝ポリポリ食べてます。水分と塩分も大事だなと思いますので、皆さんも気をつけてください。

スマホ新法

さて、この番組では最新のモバイルテクノロジーを学んでいくということで、私たちが持ち寄った今注目すべきモバイルテクノロジーをご紹介していきます。本日のテーマですが、石川さんお願いします。

12月から始まる「スマホ新法」について解説したいと思います。

もしかしたら今番組をお聞きの方は、スマホ新法という言葉を初めて耳にしたという方もいるかもしれないんですが、石川さん、スマホ新法とはズバリどんなものなんでしょうか。

スマートフォン業界っていうのは非常に強い企業が牛耳ってるというイメージがあります。スマートフォンを買おうと思った時に選択肢としては、AppleのiPhoneか、GoogleのAndroidといったOSが2つあって、そのどちらかを選ぶという状況だと思います。

ただ、ほぼ2社しかない状態にある中で、競争がないんじゃないかという風に言われています。なので、AppleとGoogleのやりたいような状況になってるんじゃないかというところで、もっと競争環境を作っていきましょうというところで、法律が出来つつあるという感じです。

元々ヨーロッパの方で進んでたのですけども、それを真似たというかパクったというかという感じで、日本でも導入しようという感じになってます。

では日本としては独占禁止法ではないですが、ニュアンスとしてはそれに近いイメージで導入しようという。

そうですね。今回の法律を作っているのが公正取引委員会なので、そこが主導してもっと競争を促進しましょうというような考えで動いています。

例えば、一番目立った内容としてあるのがアプリストア。今iPhoneを持ってたりするとアプリケーションはいろんなものをダウンロードしますけど、今はApp Storeと呼ばれるAppleが提供している アプリストアのみしかダウンロードできない。

これ例えば、Windowsのパソコンですと本当にいろんなとこからダウンロードできるという状況にもなっています。企業のサイトからでもソフトをダウンロードできますし、そういったまとまったマーケットからも落とせるというところですけども、iPhoneの場合は、App Store一個しかないというところなので。

有料のアプリケーションの手数料高いじゃないかっていうことも言われていて。Appleが30%取るのはおかしいんじゃないかっていうような話が進んでいて、だったら、Appleが提供する以外のアプリマーケット・アプリストアがあったら、そこで手数料競争が起きてもっと安い手数料でアプリが買えるんじゃないか。結果として有料のアプリが安くなるんじゃないかというような流れで、こういったルール作りをするという意味でスマホ新法が動きつつあるといったところです。

北さん、このお話聞いていかがですか?

いやでも、いろんな懸念とかやっぱりあるのかなとか。例えば、海賊版アプリじゃないですけど、怪しいものをダウンロードさせられるんじゃないかとか。

ユーザーからするといろんなところからいろんなものがダウンロードできるって。分かりづらくなるんじゃないかなとかっていうところを、どうやってこの法律はユーザーの利便性とか安全性を守りながら、とはいえ値段が下がってくっていうところを両立していくのかっていうところは興味はあるんですけど、法律はそこまでは考えてないっていう感じですか。

スタートした段階で競争環境を作ろうよっていうふうに言ったんですけども、そこに噛み付いたのがAppleで。いやいやいやいや、これはね。ユーザーのためにこういう状況になってるんだと。なので、そこを変えるをやめてくれ。っていうのをAppleはめっちゃ言ってました。

これ、なんでじゃあiPhoneってApp Storeの1か所だけしかダウンロードできないかというと、iPhone向けに配信してるアプリって全てAppleが審査してるんですね。なので、悪さをしようとしてる、例えば個人情報を盗むとか個人の行動履歴を取ろうとしてるようなアプリが万が一あった時にも、そういったアプリを審査をした上で落としていくと言うことをしてるんで。

しかもその審査って世界中でやっていて、結構何百人っていうそういった審査する人がもう本当に24時間体制、世界中で絶えず審査する状況になってるんですけども、それで出来るだけ早くアプリケーションを審査した上で出すっていう体制を整えているということもあるので、それなりにお金はかかってますよという話です。

ただ、今30%取っている企業っていうのは本当に大企業、ゲームとかやってる大企業で、一般的な開発者は15%だったり、あと無料で配布してるアプリはそういった手数料がかかってなかったりもするので、そういったユーザーを安心安全にアプリケーションを使ってもらいたいが故にアプリストアが1個しかなく、こういった手数料取ってますよという風にAppleは言っているという感じですね。

イメージとしては、物を選んで買うのにも色んな所がありますが、例えばAppleの提供している人は百貨店のような形で、ある程度の製品のクオリティが担保されていると、例えばナイトマーケットがあったり闇市があったり、いろんなお店があったりしてどこでも使って買えるようになってると、それが本物なのか海賊版なのかはちょっと分からないからユーザーとしては心配だよね、というところかなと思います。

そうですね、なので、例えばWindowsパソコンってまさにいろんなところでアプリケーションを取れますけど、やっぱり自分のことは自分で守らないといけない。

例えば、ウイルス対策用のソフトなりサービスを有料で買って入れて、常にウイルスをチェックしないと安全に使えないっていう状況ですけど、iPhoneは何もしなくても安全な状況になってるというところなので、じゃあこの先ね、今のまま何も考えずに安全の方がいいのか。いやいや怪しいアプリケーションがいっぱい取れるような状態にした方がいいのかっていうところが、今非常に悩ましい状況に来てるというところですね。

我々のインターネット黎明期からパソコンに触れてきたりネットに触れてきた人達には、危ないものをダウンロードしてしまった経験とか、いろんなものに感染してしまった怖い思いをしたという経験はみなさん誰しもあると思うんですけれども。

今のタブレットから入ったような若い世代の人達ってそういったものはあまり触れてきてないのかなと思うので、その若者への影響というのもちょっと心配ですね。

そうですよね。Appleって広告とかも怪しい広告をわざと見せなくするとか、結構縛りが強い…。良く言えばコントロールをちゃんとしてくれているんだけど、悪く言えばちょっと支配的というか。

なんかそれによって排除されてる人達もいるので、そこを自由な競争って考えると、ちょっとAppleは、悪の帝国じゃないですけど、そういう風に見える側面もあるのかなっていうのはあるんですけど、そこは市場的にというか世の中的に見ると、Appleのあのやり方っていうのは自由競争的というかもう少し支配的というか、どういう印象を持たれてるんですかね。

例えば、この議論って一番最初言われていたのはEPICとかゲーム会社が自分達でやりたいようにやりたいんだけどもできないと。Appleに3割の手数料を払いたくないんだというところからスタートしてるというところがあるので、Appleに対して効力を持ってない企業がいっぱいいるのは間違いないというところはあります。

ただ、やっぱりAppleってスティーブジョブズの頃からずっと、ユーザーのデータはユーザーのものだみたいな考え方になっていて。だからそこはきっちり守らなきゃいけないんだよねと。責任持って守らなきゃいけないんだよねということもあって今の仕組みになってたりもするので。

いま自分の親の世代とか子供の世代にiPhoneを渡しても、まあまあ安心して使えたりするじゃないですか。っていうことの引き換えにいろんな怪しいアプリを入れることがいいんだろうかっていうのは、なかなかやっぱりね、人によって考え方は違うかもしれないですね。

あとは問題点としては、あんまりこうした議論が一般の皆さんに伝わりにくい。その中で進んでいるというところも一つ気になる点ですよね。

やはりどうしても手数料安くなりますよ、っていう部分でしか一般誌は報道しなかったりもするし。これが本当にユーザーにとってのデメリットって何なんだ ていうことまでは掘り下げて説明しないので、もっと本来であれば議論が必要なのかなというふうに思います。

あとアプリストア以外にも注目のポイントとしてあるのが、iPhoneの独自機能をもっと開放しなさいよという話があります。

例えば、Apple製品って、iPhoneを持ってます。AirPods買ってきました。っていう時にはAirPodsの蓋パカッと開けるともう繋がってくれたりするっていう状況もあるし。iPhoneで聴いてた音楽を家に帰ってMacbook開けたら、今度はMacbookから再生したものが聞こえるとかっていうのがあったりするんで。そういった機器間連携みたいなものももっと他のメーカーに開放してくださいねっていうのもスマホ新法には入っています。

ただ、これもやはりAppleとしては独自機能で差別化したいってのはありますが、一方でやはりそういったユーザーのデータを守らなきゃいけない。様々なメーカーが入ってくるとそこでデータが漏れてしまうかもしれないので、非常に懸念をしてるという風に言われてます。

結局、技術が流出することで最終的に競争力っていうところを自分達が損なってしまうかもしれないというのは各社は心配になるところですよね。

Appleとしては本音では「じゃあ繋ぎたいならお金ちょうだいね」 みたいな感じもあるらしいんですけど、なかなか、じゃあそのお金っていくらが適正なのかってことでもあるし、結局そのお金をもっと安くしてよって話になったりもするので、Appleとしては出来るだけ繋ぎたくないっていうのが正直なところだと思いますね。

でもここは難しいですよね。企業努力としてお金とそのリソースをかけて開発してきたところを強くなったから皆さんに開放してくださいと言われて急にYESとはなかなか言いにくいですよね。

っていうところもありますし。今ヨーロッパで先行して導入が進んでいるんですけど、ヨーロッパの場合だとApple IntelligenceっていうAIの機能も入ってなかったりとか、あとはiPhoneの画面をMacbook上に表示するっていう機能もヨーロッパだと非対応だったりもするんですけど、Appleとしては個人情報が漏れる可能性が出てくるものに関してはその国・地域では提供しないっていうスタンスになってるので、スマホ新法が導入されると日本でもAppleのこの機能が使えませんとか導入未定ですよ、ということにもなりかねないという風にも言われてます。

WWDCのようなところで、新しい機能が出ますよと言われても日本にはこの法律があるのでこれは使えません、という風になるかもしれないと。北さんどうですか?

自由に使いたいと思う反面、Appleがいい感じにパッケージングしてくれてる機能 ってすごい便利じゃないですか。あれってやっぱりAppleがすごいハンドリングしてるから できてることっていっぱいあると思うんですよ。

そこはGoogleというかAndroidに比べるとAppleの方が特にハードウェアの面でやっぱり一歩も二歩も使いやすいとか、ユーザーにとっての利便性がある機能って出せてるかなというところは、彼らがハードもソフトもしっかり自分たちで固めてるってところがあると思うので、それがやっぱり突き崩されていくというか。

法律によってユーザーにとって逆にメリットがなくなっていくというか。せっかく今までいい感じだったけど、Appleが開放しないといけないからもう提供しませんみたいになるのは、なんかユーザーのためなのかっていうのをお話を聞いてて思ったところはあります。

Appleもそういったいろんなアプリマーケットを使いたいんだったら Androidがあるじゃないかっていう言い方をしてるので、今は全部競争してるわけですよ。

そういったAppleのiPhoneの閉じた世界、かたやGoogleの開けた世界、Androidがあって。その下にはGoogle Pixel。さらにはSamsungのGalaxy、SHARPのAQUOS、SONYのXperia、Xiaomiとか、いろいろあるわけですよ。

っていう中で、こういった異なる世界がもう既に競争バチバチしてると、日本ってほぼ半々のOSのシェアだったりもするので、これでいいじゃないかっていう風に言ってるんですけど、公正取引委員会としては何か手柄を上げたいみたいな。Appleをギャフンと言わせたいみたいな。何かそういうモチベーションで法律作ってる感じがしなくもないのかなって気がします。

ゲーム会社の取り分を取られたくないっていう主張から始まったとはいえ、ちょっと急な展開のような印象がありますね。

しかもヨーロッパで今何が起きてるかっていうと、こういったユーザーのために法律変えましたって「バンザーイ!」と思ったらそこをうまく利用したのがMetaで。MetaはそういったiPhoneの様々な蓄積されてるWi-Fiに接続したデータとかユーザーが発信履歴といったあらゆるデータを取ってMetaでFacebookで広告出すみたいなことをやったりもするので。

日本の国民のために頑張りましたのはずが、結果としてアメリカ企業がみんな得して新たなビジネスに繋げてるっていう状況になってるので、この辺も何かもうちょっと先を見た議論を本当はしなきゃいけなかったなと思いますね。

本当に今いろいろな個人データがスマートフォン・タブレットの中に入ってる状態で、それを企業にどこまで委ねるかというところをやっぱりユーザーが選択できるようになっていってほしいですね。

なので、Appleはそこをちゃんとユーザーに見せて、これを共有していいですかっていうのを表示もちゃんとするので、それでいっぱい共有することによって 個人の合った情報をもらいたいという人もいればかたくなに拒否することもできるので、そういった選択肢も奪いかねないっていう状況にあるのかなと思います。

アプリストアをやりたい人たち

一つ質問していいですか?これを受けて、例えばアプリストアをやりたい人たちがどういう人たちか。先程ゲーム会社というのがあったんですけど、日本のテレコムのキャリアさんとかはこれを見て「おっ、これはビジネスチャンス」と思っているのか逆のことを思ってるのかとか。あるいはゲーム以外でアプリストアをやりたいと思っている人たちが他にいるなら伺いたいなと思うんですけど。

この間KDDIの松田社長に聞いた時には、別に自分たちでアプリストアやる気はないと。昔、彼らってね、アプリストアやってたんですけど、全然もう今はやる気がないという言い方をしていました。

やっぱりキャリアの人に話を聞くと、今更アプリストアって、もう言っちゃあオワコンじゃないですか。今じゃあ新しくアプリストア立ち上げたとしても、これからみんなが一生懸命いろんなアプリをダウンロードしてくれないし、むしろもうみんなアプリをダウンロードすることに飽きている状況なので、今から参入するメリットって多分ないと思うんですよ。

AndroidってGoogleがやってるGoogle Playストアはありますけど、それ以外にもメーカーがやっている、SamsungがやっているアプリストアとかAmazonがやってるアプリストアとかあったけど、Amazonはもうやめたって言ってるんですよ。

なので、別に第2・第3の選択肢があっても結果としてユーザーはそんなにいないし、儲かってないっていう状況なので、とりあえず法律でアプリストアを作れるようになりましたと言っても、じゃあ盛り上がるかっていうと盛り上がんないんじゃないの?っていうのが業界の見方ですね。

iPhone 4の頃ぐらいとか本当にいろんな開発者の方がたくさん出てきてアプリビジネスがワーッと盛り上がった頃ならまだしも、今そこで急に戦えるかというとストアというかプラットフォーマーになるのは難しい状況ですよね。

だからやることが遅すぎるというか。スマートフォンのOSもiOSとAndroidでもう決着してるじゃないですか。これが昔、Windows OSとかがあった頃。Windows Mobileとかあった頃にこういった法律があれば3社で盛り上がったかもしれないけど、もう2社で決着がついている中でこんな競争法で盛り上げようって言ってももうそんなの誰も求めてないからっていう。

アプリよりも今AIじゃないですか。インターフェースがここら辺からAIに代わっていこうかってときに「今さらアプリか」ってのは。

下手したらね、もうAIがあったら自分で欲しいアプリを作れるような 時代にもなってたりするじゃないですか。しかもAIエージェントがあったら全て自分でやりたいこともお願いするっていう時代になってるので、公正取引委員会とかっていうのは5年〜10年ちょっと考え方が遅いんじゃないかなって気がしますね。

今ユーザーにできることというのは何かあるんでしょうか?

だから、アプリストアができたとしても、やっぱりそこの審査とかはAppleもやったりするという話になってるので、安全性が保たれるとは言ってますけども、とはいえ本家のアプリストアに比べると品質が落ちる可能性もあるので、本当に欲しいアプリがない以外には極力アクセスしない方がいいんじゃないのかなと思います。

それは実際に実施された後に自分が自由に ダウンロードできるような環境になって、もしかしたら色々なアプリが出てくるかもしれないけれども、吟味する必要があるということですよね。

そこはね、リスクを考えた上でダウンロードするっていう感じだと思います。

本当にスマホ新法に関しては、またこれから色々とメディアニュースでも取り上げられていくと思いますので、石川さんももちろんずっと記事を書き続けられる予定ですよね。

そういったプレッシャーが各所からあるので、書き続けると思います。

皆さんにすごく分かりやすく解説していただいて大変助かりました。我々もこの番組でも引き続き追っていきたいと思っております。

エンディング

Mobile Tech Lab。そろそろお別れの時間となりました。石川さん、北さん、今日の放送いかがでしたか?

いやもう、ただひたすら今日は勉強になったなっていうのと、こういうユーザーからしたら分かりづらいことっていっぱい世の中あると思うんで、それをこの番組にも、テクノロジーとちょっと離れるかもしんないですけど、積極的にやっていきたいなと思いました。

石川さん、いかがでしたか?

そうですね、やはり多くの人に知ってもらいたいなというところがあります。なかなかこのスマホ新法に関しては解説しているような媒体はないので、できるだけわかりやすくご紹介これからもしていきたいなと思いました。

ラジオで放送した楽曲

エジソン / 水曜日のカンパネラ

恋のダウンロード / 仲間由紀恵 with ダウンローズ