2025年9月14日にBAYFM78で放送された「Mobile Tech Lab」第24回のアーカイブです。
日本ではiPhoneがソフトバンクから取扱いが開始し、au・ドコモが順次取扱いましたが、その経緯について話しました。
目次
電動自転車事業を運営するドコモやソフトバンクなどのキャリアについて
早速なんですけれどもお便りいただいております。ラジオネーム、ファンキーファニーエイリアンさんから。
弓月さん、石川さん、北さん、初メールです。地元民なのにBAYFM78はここ数年聴く機会がなくなっていました。ところが、6月末にたまたま出張先の京成成田駅でBAYFM78のタイムテーブルを見てこの番組が今年4月に始まったことを知り、そこからは毎週リアタイ実況を楽しんでいます。
モバイル技術に詳しいお三方に質問です。私はいわゆるシェアサイクルを利用することがあるのですが、バイクシェアはドコモ、ダイチャリはソフトバンクがそれぞれ運営に関わっていますよね。
サービス対象はモバイルというより電動自転車(電動モビリティ)だと思いますが、2社が長年培ってきたモバイルの技術はどのように関わっているのでしょうか?ということなんですが。
街中にシェアサイクルありますけども、基本的に通信回線が入っているので、通信でサーバーに繋がって、我々のスマホでどこに何台あるかとか、それぞれの自転車のバッテリーがどれだけ残ってるかというのがわかるようになっています。
携帯電話会社は通信だけでは儲からないということもあるので、様々な事業を展開していく上でああいったことをやっているというのが一つあります。
ただね、ドコモのシェアサイクルとか見てると、たまにトラックで一生懸命自転車運んでいて。
乗せて移動してますよね。
1か所に返却が集中してしまうというところもあるので、あれをまた元に戻すというのもありますし、バッテリーを充電するというのもあるので、相当なアナログな人力がかかってるというところがあります。
ただ、最近ではAIを使ってうまいこと分散したり、効率よく回すっていうこともやってたりもするというところがあります。
なので、やはりドコモとかソフトバンクとか、ITやってる企業がやるとなかなか儲からないであろうビジネスも儲かるビジネスに変わっていくというところがあるんじゃないのかなと思いますね。
やっぱりそこにも通信の技術があるんですね。
もともとIoT、例えばLTEのモジュールとかがあるんすけど、そういうものをある程度普及させたいというか。一つユースケースとしてドコモがモデルケースを作って見せる、みたいな意味もあってやっていたっていうのが一つ。
あと実はドコモのバイクシェアのサービスって、一番最初は電子マネーのiDを普及させる目的もあったりしたっていうので、今全部カードからアプリになっちゃったんですけど、最初はiDだったんですよね。
電動自転車の事業を通して自分たちのやってるサービスを普及させるとか、こうやってやっていくんだよってのを見せる、っていう目的でやってたところもあるのかなと思います。
ファンキーファニーエイリアンさん、皆さんのご意見、いかがでしたでしょうか?
ソフトバンクとiPhone
さて、この番組では最新のモバイルテクノロジーを学んでいくということで、私たちが持ち寄った今注目すべきモバイルテクノロジーをご紹介していきます。
さて、今日のテーマなんですけれども、AppleとiPhoneを振り返ってみたいなということで、お二人にいろいろ伺っていきたいと思います。
私がお伺いしたいのは、石川さん、iPhoneが一番最初にソフトバンクから始まったということの経緯を取材されましたか?
そうですね。あの頃、どこからiPhoneって日本で出すんだろうというのもある中で、ドコモなんじゃないかというふうに言われてましたけども、結局ソフトバンクが独占的に出したというところがあります。
その後何年か、スティーブジョブズさんが亡くなってから言われているのが、孫さんがiPodに電話機能をつけたものをイラスト化してそれをスティーブジョブズに見せたと。そしたらスティーブジョブズから「いやいや、こんなのはもう作ってるからいらないよ」って言われて、孫さんは返された。
で、その後いろいろあって、ソフトバンクが独占的にiPhoneを扱うようになったという風に孫さんは言ってる。孫さんを語る自伝書的な本にもそう書かれている。
ただ、本当なのかというところが若干眉唾ものというか。
最近出た「勝負師」っていう上下巻の日経BPから出てる本にもそのエピソードが書かれてるんですけど、「孫さんはこう言っている」っていう感じで若干信用してないっていうか。
当時のソフトバンクは料金プランで頑張っていましたけども、決定打がなかったというところもあるので、ソフトバンクとしてはもう是が非でもiPhone欲しかったというのはあるんじゃないのかなと思います。
でも、iPhoneが発売になった当時というか、発表になった当時は、日本ではあまり人気なかったですよね。
売れへん言うてる人がいっぱいいたなという印象が。
結構有名な方がみなさん「iPhone売れないよ」って言ってた印象があります。
いや、実際売れてなかったですよ。一部は当然Apple製品だから画期的だとか、確かにタッチパネルのUIが素晴らしいっていうのはあったんですけど、当時の日本の市場でいうとガラケーが圧倒的に強くて。
ガラケーなんてそれこそインターネットできて、メールできて、ゲームができて、テレビ見れて、電車乗れて、音楽聴いてっていう超多機能な携帯電話だったんですよ。
孫さんがiPhoneを一所懸命売ろうとしたけど売れなかったというところがある中で、ソフトバンクが「iPhone for everybodyキャンペーン」っていう、実質タダで使える、タダで買える、タダで持てるっていうようなキャンペーンをやってようやくみんな「じゃ、試しにiPhoneにしてみようかな」っていう人が 増えてきたというところもありますし。
ただ、一方で「いやいやソフトバンクなんて電波つながんねーじゃん」って当時ね、散々言われてて。「いやいやドコモからiPhone出るまで待つわ」っていう人もいっぱいいて。
その間しばらくソフトバンクとしては独占的にiPhoneを扱ったというところですし、iPhoneが売れたっていうのは数年経ってからっていう感じだったと思いますね。
やっぱり出た当時は赤外線が使えないとか、キャリアメールが「@i.softbank.jp」であったりとか、とにかく気軽にできるっていう印象ではなかったですよね。
最初のアプリとかもやっぱりちょっとあんまり日本で流行ってないものが多いというか。多分有名なところでいうとmixiとかが使えなかったりとかっていう。
ビールを飲むだけのアプリとかOcarinaとか。本当に何かちょっとPDA的な、何て言うんですかね。ちょっとそういう要素が多かったような気がしますけれども。
auがiPhoneの取り扱いを開始した頃の話
これ、ソフトバンクの後にauがiPhoneを取り扱うようになるまでに約4年ほどの月日があるんですね。
そうですね。ソフトバンクが独占的に扱っている中、KDDIも本来はiPhoneを早く扱いたかったんですけど、周波数的に合わなかったんですよ。
アメリカで売られているそのiPhoneをまんま持ってきても日本の電波につながらないという状況もあったので、そこを何とかしなきゃいけないなっていって電波の使い方を変えたりとか、いろいろ調整をしてたんですよ。
で、それをやってたのが今の社長の松田さんっていう人なんですけど、そういう調整を何とかすることによって導入したのが2011年という感じでした。
で、当時KDDIは目玉としてテザリングができますよと。
そうでした。
昔のソフトバンクのiPhoneはテザリングが一切できなくて。なんでできないんだというのをもうみんなブーブー文句言ってた中で、当時KDDIの社長だった田中プロが「テザリングをやるんだ」って言って、iPhone導入しますって言って。うちは電波余裕があるからねっていうふうに言ってやったんですよ。
そしたら孫さんがヤベーってことになって、何をしたかというと、当時第4のキャリアであったイー・モバイルを買収したんですよ。
そうでしたね。
イー・モバイルやイー・アクセスを買収して、彼らの電波をソフトバンクにガッチャンコして、ウチもテザリングできますよって言って、バッチバチのiPhone競争が始まったという感じですね。
結構な力業だったんですね。確かに最初はあんまり使えないっていう印象だったのが、どんどんキャリアさんたちが頑張ることによって使えるっていうような印象が広がっていったのかなと思いますね。
昔のガラケーの頃っていうのはメールアドレスもそうですし、とにかく一度キャリアを契約したらずっと使い続ける傾向があったんですが、iPhoneによって何が変わったかというと「もうキャリアなんてどこでもいいじゃん」と。
Apple IDとiPhoneがあれば何でもできてしまうという状況が生まれたので、キャリアとしてもめっちゃ焦った。ソフトバンクにとってみると、KDDIが扱うことによってユーザーが一気に流れるんじゃないかという焦りもあったので、だったらイー・モバイル買っちゃおうかって言って買ったみたいな感じになってましたね。
その当時って同じ機種でもキャリアによってちょっと形が違ってたりとか、ロゴの位置が違ったりしてましたよね。
私、iPhoneケースをベースにしたアート展をやってたんですけど、あれもAndroidではできなかったと思うんですよね。ケースがいっぱいありすぎて。ただ、iPhoneはケースが一つだったので、すごく普及したのかなっていう印象があります。
やっぱりね、そういったケースやアクセサリーが充実してるっていうのもiPhoneの魅力というか。しかも2年に一回ぐらいしかデザイン変わらないので、長く売れる・長く使えるっていうのも一つ iPhoneの特徴だったのかなって感じがしますね。
ちなみにKDDIが取り扱いを始めた時がiPhone 4Sで、この年は発表の翌日にスティーブジョブズが亡くなられているんですよね。
ドコモがiPhoneの取り扱いを開始した頃の話
そして、2013年になってようやくドコモが登場ということですが、これ業界の中ではいつドコモが参入するんだっていう噂とかあったんですか?
ドコモが扱うまでは「ドコモで扱うことが決まった」みたいな飛ばし記事がバンバン出ていて、あれでPV稼いでるなみたいな感じがすごいしたり。
ただ、2013年の9月、ちょうど自分はIFAに行ってたんですけど、あのタイミングでどうやら本当らしいぞって話が出て、一気に注目されていったという感じです。
以前にこの番組のゲストに来ていただいた矢崎飛鳥さんは、わざわざAppleの発表会場に行き、ドコモの社長加藤さんに突撃取材をしたみたいなこともありました。
3キャリア全てでiPhoneの取り扱いができるようになるまでに6年ほどかかってるっていうのは、結構皆さん大変だったんだろうなという印象ですね。
Appleが非常にうまいのが、シェア的に低かったソフトバンクから売らせて、ソフトバンクがだいぶ売り切った感が出てきたら「KDDIいらっしゃい!」みたいな感じでした。
4Sのタイミングっていうのはデザイン的にも進化してないというところがあるので、新しいキャリアを増やすことによって話題性を出して売る。5sとか5cのタイミングもドコモが売ることによってドカンと売れるという状況だったので、キャリアは本当にAppleの手の中にあるみたいな感じですね。
ネットワーク技術者から見た当時のiPhone
北さんは通信技術を扱う会社としてどのように見てらっしゃいましたか?
当時実はLTEという通信の規格を日本で使えるようにするために裏方をやってた時期だったので、iPhoneは最初「面白いおもちゃだな」みたいな感じで使ってて。
LTEが普及し始めて、例えばYouTubeがもっと気軽に見れるとか。リッチなコンテンツがスマートフォンで どんどん消費されるようになっていくっていう、ちょうどその時期を見てる人間ではあったので、iPhoneというものが早く登場しすぎて、ネットワークの方が後から追いついてきてみたいな。
で、多分それ2つの相乗効果で爆発的に多分 iPhone 7ぐらいから売れた印象がありました。iPhoneだけでも駄目だったしLTEだけでも駄目だったんだけど、その2つが組み合わさったことによって爆発的に売れたのかな、普及したのかなっていうのを間近で裏側から見てたっていう感じでした。
キャリアからすると、ガラケーであればある程度流れるデータの容量が管理できるというかコントロールできる。要は、携帯電話会社が端末の仕様を決められるので、どれだけデータが流れるかっていうのもある程度コントロールできるんですよ。
けど、iPhoneなんてキャリアがコントロールできないので、とにかくアプリが出てきたらバカスカデータが流れるみたいな感じになって、キャリアからすると導入したいけどネットワークが逼迫するから
はてどうしたものかなみたいなのはありますよね。
YouTubeがやばかったですね。通信のシェアみたいなものって中で見れるんですけど、その時にやっぱりビデオ系がほとんどを占めるんですよね。
だからその時にどうやってこのトラフィックをうまいこと分散するかとか、シェアが大きいところは直接つなぐとか、いろんな工夫をして今快適に使えるネットワークを作ってるっていうのがあるので。
やっぱりスマホ黎明期とかLTEが普及し始めた頃っていうのは、もうとにかくその回線をiPhoneとAndroidの端末のアプリが使いまくるっていう時期があったって感じです。
2011年だとYouTuberという言葉はないですけれども、いわゆるYouTuberの第1世代みたいな方が生まれた時だと思うので。
当時Ustreamとかですよね。
Ustream懐かしい。
Ustream配信してましたね、そういえば。端末から配信するっていう文化ができたのもその頃だったので、結構キャリアさん大変だったでしょうね。
でもちょっとここで疑問なのが、日本の回線って割と安定してる印象があったんですけど、iPhoneが出た当時のアメリカや海外の回線っていうのはどうだったんでしょうか?
結構厳しいものがあったんじゃないのかなと思います。だからこそむしろ公衆Wi-Fiみたいなホットスポットというのが普及してきたっていうところはあったりするんじゃないのかなっていう感じです。
やっぱり日本のキャリアがすごいのが、当時は3社で争ってたというか、同じiPhoneは導入されて、メディアとかはそれこそ「山手線iPhone3台持って1周して全部で速度チェックする」とか、「新幹線に乗ってひたすらこだまに乗って一個一個駅を降りて速度チェックする」とか、3社の比較とかやってました。
そういったこともあって3社のネットワーク品質を上げていく、結果としてどこでも繋がるしどこでも速いっていうような、世界に誇れるネットワークができたという感じですね。
東日本大震災以降のネットワーク
おそらく2010年よりも手前ぐらいだと、まだ地下鉄がほとんど実は携帯の電波繋がらなかったんですよ。みんながスマホを使うようになって「地下鉄でスマホが使えないとはどういうことだ」みたいな感じで。
それが突き上げになってスマホの普及と共にいわゆる不感地帯と呼ばれるような、ビルの狭間だったりとか高い山だったりとか。富士山登ってる時、今だと電波繋がるんですが、昔は繋がらなかったんですよね。
そういうのが繋がるようになっていったっていうのは、結構スマホが使えないっていうのがストレスになるとか、下手したら命に関わることもあったりするので、そういうのを解消してほしいっていうのでユーザーから突き上げられてどんどん不感地帯がなくなっていったっていうのが背景としてあったかなと思います。
やっぱりどうしてもスマートフォンがライフラインというか、そういう存在に置き換わってきたのが2011年ぐらいだったのかもしれませんね。
それこそ東日本大震災がきっかけだったかなと思うんですけど、震災の当日はTwitterは繋がるけど、携帯は電話もできないメールもできないという人が多くて。
あの頃まだLINEがないんですよね。
スマートフォンでやってるSNSが実はライフラインとして重要なんじゃないかっていうのが認められたというか、認知されだしたのが震災だったのかなっていうところです。
LINEの誕生は実は震災がきっかけになっていたという話もありますね。
3月11日の夕方ぐらいに本当に電話が繋がらなくなった。ネットワークも絞らなきゃいけないっていうので電話もメールもなかなか繋がらないという状況にもあったので、ああいった状況でもちゃんと繋がるインフラということでLINEが誕生したという風に言われてたりもします。
どんな時でも繋がるってことが重要なので、そこを確保するという意味で、ホント一気に3月11日以降は変わったのかなって感じですね。
ほんとに今はどこにでも繋がる電波があるような気がしてますけれども、すごくそういった地道な努力の下にちょっとずつ増えていったんですよね。
昔「ユビキタス」っていう言葉があったんですけど、2007〜2008年ぐらいまで普通に「ユビキタス社会が」とか言ってたんですよね。
で、今となってはそれが当たり前の世界なんですけど、でもそれって多分なんですけど、2011年のあと数年して、2015年くらいから何か当たり前に繋がるようになってどこでもスマホが使えてみたいな世界になってきてるなっていうのがあるので。
何かそういう昔夢見た世界もあるし、おそらく震災みたいなきっかけもあって、今そういう便利な時代になってるけど、結構遡って考えてみると「あの時どうやってやってた?どう連絡してたんやろ?」とかっていうのが、例えば「LINEができる前に何で連絡してましたか?」っていうところが、すごい思い出すと結構面白いなと思って。
今のLINEのようにスピーディーなやり取りではなくて、メールでちょっと間をおいたやり取りだった気もしますよね。
それこそセンター問い合わせとかやってたわけじゃないですか。
当時からテックに敏感な方達はメッセンジャーアプリみたいなものを使ってたと思いますが、一般の人達にはそういったメッセンジャーという 存在もあまり知られてなかったですもんね。
何か使ってました?メッセンジャーアプリ。
私は何かSkypeをやり取りしてたような気がするくらいです。
Skypeはでもアプリが出たの結構遅かった。
あとカカオトークですか?カカオトークの方がLINEより早いんですよね。
石川さんなんか使われてました?
いや、それが本当にそのタイミングでのメッセンジャーアプリって何なんだろうっていう。なかなか思い出せないんですよね。
当時の記憶が完全に抜け落ちてますけども。
私はmixiでした。
今はDMがあるので、名前だけ知ってればその人のSNSにたどり着けるっていう状態ですけど、昔は連絡先を調べるってこともなかなかできなかったですからね。
エンディング
Mobil Tech Lab。そろそろお別れの時間となりました。石川さん、北さん、今日の放送いかがでしたか?
やっぱりiPhone・Appleって、言うなれば自分の青春時代を共に過ごしてきたようなものなので、私から今まで見てたビューとは違う世界が石川さんから聞けたっていうのが今日すごい楽しかったですね。
歴史の振り返りでしたね。石川さん、いかがでしたか?
2007年にアメリカでiPhoneが発売された時にハワイに買いに行ったのが、自分の仕事の歴史の中で一番大きかったので、iPhoneと共に歴史があるかなって感じですね。
そして、またどんどん刷新されていくんですね。
これがいつまで続くかですよね。
