石川温・弓月ひろみ・北真也がお届けする「モバテク」、2025年12月14日にBAYFM78で放送された第37回のアーカイブです。
今回は「年末年始のモバイルテック事情」と題して、5G SAやMassive MIMOについて語りました
目次
オープニング
さて、もう年末も近づきまして忘年会シーズンですが。北さん、今年忘年会どうですか?
忘年会だらけですね。毎年そうなんですけど、やっぱりどうしても会社員的な働き方なので。付き合いの飲み会があって体重が増えて、年始に心新たにダイエットするというルーチンワークでございます。
石川さん忘年会と言えば。
そうですね、スケジュールをどう調整するかというところから始まるという感じだと思いますし。連日入ってはいますけども。ただ、やっぱり昔に比べるとね、二次会に行かなくなって。
8時ぐらいとかでね、終わるようになってたりしますよね。
っていうところはね。非常にありがたいかなみたいな。だいぶ楽になったかなというのはありますね。
結構メーカー主催の忘年会も最近あったりしますね。
そうですね、メーカーもあったりもしますし。懇親会と称してね、大規模なものもあったりもするので。会えて楽しいなっていう感じはありますね。
顔を出すのも仕事のうちですけど、1年関わった方と交流を深めるのも楽しいものですよね。
年末年始のモバイル・テック事情
さて、この番組では最新のモバイルテクノロジーを学んでいくということで、私たちが持ち寄った今注目すべきモバイルテクノロジーをご紹介していきます。
本日のテーマは「年末年始のモバイルテック事情」です。年末年始といえば人がたくさん集まるので、携帯が繋がりにくくなるみたいな事情がありますが、北さん、この辺りいかがなんでしょうか?
ネットワーク屋さんからすると、年末年始っていうのはもう一大イベントなんですよね。一番多いのは「お正月のおめでとう」メールでメールサーバーが落ちるっていう。
あけおめメール?
あとはやっぱり初詣やクリスマスイルミネーションなど、人がワラワラ集まってくるので、そこでネットワークが混み合う。僕らの業界やと「輻輳」って言い方をするんですけど、混み合うっていう意味での輻輳っていうのがあって。
集中しすぎて混雑すること。モバイル業界の場合は回線が繋がりにくくなる状態が輻輳。
いろんな意味があるんですけど。ちょっと混み合うぐらいだったら輻輳とまでは言わなくて、例えば混み合ってきてちょっと繋がりにくくなったやつがある瞬間にドーンって攻撃のようにリトライ処理が走っていってサーバーを落とすみたいな症状が起きて、通信ができなくなっちゃう状態。それに混み合ってしまったやつがもうぐちゃぐちゃになってるものを指すことが多いです。
人が詰め掛けすぎて身動き取れなくなるみたいな。
っていう状態のものを輻輳と言って。そういう時は流量を落とすために少し規制をかけたりして。
ちょっと入り口狭くしたりとか。
で、スムーズに流れるようになったら規制を解除するっていうのを、ネットワーク屋さんはやってたりします。
それって皆さんずっと見張ってらっしゃるってことですか?
そうです。
年末年始休みがないってことなんですか?ネットワーク屋さんは。
昔は本当にそういう年末年始体制みたいな。今も多分やってるとは思うんですけど。昔は本当にもう年末年始休み無しで。29日・30日から4日ぐらいまで特別態勢みたいな感じで。
年末だったらコミケがあるからコミケで移動基地局出したりするでしょうし。
コミケも特別体制があります。
でもそれっていうのは、一か所に固まっててできるものなんですか?例えば、明治神宮はいっぱい人が来るからってなったら、そこだけをずっと見てる人がいるみたいなことですか?
本当に読める時はそういうふうにやるんすけど、同時多発的に全国で初詣が発生するので、そこはもうある意味諦めてるというか。
じゃあここが今すごい混んでるぞってなったらそこを調整して、また急にここ増えたぞって言ったらそこを調整すると。
例えば花火大会とかコミケとかって、もうある程度ここをケアしてやれば救える時は頑張って救うけど、そうじゃない時はネットワークが死なないようにネットワークを守るように。あけおめメールみたいなドーンってくる通信が増えそうだったら、ちょっとだけ規制をかけてとかっていうのをいろいろケアします。
携帯の頃はあけおめメールで31日から1日にかけて、だんだん0時に近づくタイミングで繋がらなくなり始め、しばらくメールが送れなくなり、1時とか2時ぐらいになってようやく流れ出すとかっていう感じでしたけど。やっぱりスマホになりLINEが普及したことによって、それもなくなっていった感じですよね。
あとグループチャットに1個送っとけばいいかなって感じで、いろんなグループにあけおめスタンプみたいなのをとりあえず送ればいいかなってなったので、ちょっと負担は減ってそうな気もしますね。
だいぶ分散されたというか。TwitterでやったりとかLINEでやったりとかっていって、皆さんそれぞれのところでやっているので、やっぱりメールしかないとか電話しかない頃に比べると、だいぶ楽になったのかなと思います。
とはいえ人が極端に集まると、ネットワーク自体が使えなくなるので、LINEも使えなくなってしまうということですよね。
それはもうどちらかというと混み合ってる駅とかと一緒で、人がいっぱいいると電波のリソースが使えなくなったりとか。例えば、万博みたいなイベントだと、そこにわーって今までいなかった人が集まってくると、元々そんなに人が入れないネットワークのキャパシティーのところに人がどーんと集まってくるので、繋がりにくくなるっていうのはあるかなと思います。
繋がりにくい時に「これをするといいよ」って言うのってあるんですか?私たちユーザー側からすると。
おまじないで、機内モードにして戻すとか電源入れ直すとかはあるんですけど、本当に混み合ってる時はもうどうしようもないです。繋がらないものは繋がらない。
あとはもうSIMをいくつも入れて回線を持つとかしかないですかね。
そうですね。
複数回線持ってるとこっちは繋がるけど、こっちは繋がらないとかっていうところがあったりする感じはしますよね。
地下とかに入った時に、取材の後とかで、モバイル系のジャーナリストの方が色々いる時に「ここはau入るけど、ソフトバンク入らないね」「ここは楽天入るね」とかっていうのを見たりしますけど、結構場所によって全然違ったりしますもんね。
各社使ってる周波数帯がちょっと違ったりとか、アンテナ置いてる場所が違うとかだったりもするので、だいぶ濃淡というのは出てきてる感じはしますね。
キャリアごとの電波の強さ
ちなみに今どこが一番強いかとか、どこが繋がるかみたいなのって実感値的に何か思う所ありますか?石川さん。
オープンシグナルって調査会社も出したりもしますけど、そういったネットワーク品質でいうと、今auが3連覇取ってたりもするので、そこは強いと。
で、ソフトバンクが最近「あの評価基準はおかしい」って言い出してるんですけど、ソフトバンクも肉薄してるっていうのがあると思います。
一方で広さという面においては、ドコモはやっぱ相変わらず強いっていう感じだったりもするので、キャリアのカラーというか、強み弱みっていうのは結構出てんのかなと思いますね。
離島の方の端っこに行ってもドコモは繋がるとか、そういう広さってのはありますよね。
元々NTTって人が住んでるとか住んでない関係なく、日本全国にユニバーサルサービスとしてネットワーク作りましょうっていうんでやっているので、そこは強いかなと思います。
Massive MIMO
今後さらに、色んな所に人が行き来するようになって、こういう輻輳といった現象が増えた時に、技術でこれを何とか解決していこうという未来みたいなものもあるんですか?
そうですね、まだあんまり広がってないですけど、Massive MIMO(マッシブマイモ)っていう技術。アンテナがビームフォーミングで人を狙い打つっていうのをやって。
5Gって元々、Sub6っていう広く薄くやるエリアと、ミリ波っていうすごい狭いけどめちゃくちゃ速いみたいなやつがあって。そのミリ波の技術でMassive MIMOっていうので人を狙い撃つみたいなことをやると、すごく狭い領域だけど爆速で電波を占有できるみたいな形で通信できます。
そういうものがもっと広がっていくと、混み合ってるところでMassive MIMOがいっぱい撃たれるとそっちに人が流れて、一番混み合う広い電波の部分の通信の負荷が下がるので、もっと快適に使えるようになっていくっていうのが一番あるかなと。
もう一つは、総務省がもっと電波を開放してやっていくっていうのも一つの手かなと思います。
この総務省が電波を開放するっていうのは、難しいことなんですか?
そうですね。先日、ソフトバンクが6Gに向けた実験っていうのをメディアに公開したんですけど、その時は7GHz帯っていう周波数帯を使いたいって言ってるんですよ。
けど、現状はそこには放送局が結構牛耳っていて、もうガッツリ使っている周波数帯なんですよ。これじゃあソフトバンクでもドコモでもKDDIでもいいですけど、ここを6Gで使いたいって言うと、「じゃあ放送局さんどいてくださいね。」っていう話に今まではなってたんですよ。
実際、過去にもそういったね、どいてもらうってこといっぱいやってきたんですけど、もうそろそろそれも限界だよねって。じゃあどいてもらう時に「じゃあどこに行くんだ?」って話もありますし。どいてもらうには携帯電話会社がお金を払って、どくためのコストを負担しなければいけないというところもあるので、あんまりそれって誰しもやりたくないんですよ。
っていう中で「じゃあその周波数帯をみんなで共用しましょうよ」という話にもなりつつあって。
例えば、放送局が中継、箱根駅伝でもなんでもいいですけど、中継で使ってる時には放送局が使いつつ、それ以外の中継してない時には、じゃあ携帯電話に使いましょうとか。
あとエリアによって使える場所・使えない場所ってのを使い分けましょうみたいなことをやったりもするので。だんだんだんだん周波数をいろんな人達が共用することによって、携帯電話ももっと快適に使えるようになるという方向性を目指してるという感じですね。
何かそう聞くと報道とかテレビで使われる電波と、私達が使っているその携帯の電波は同じ周波数帯を共用・共有するっていう未来が来るかもしれないですか?
そんな未来が来る可能性もあります。ただ、一方で、今テレビ局もなんだかんだ言って携帯電話の電波使って中継したりするんですよ。
結構中継の場所とかに行くと、背中に背負う小さいランドセルぐらいの機材があって、そこの中にはドコモ・au・ソフトバンクとかいろんな回線が入っている。そういった中継機材があって、一つの回線だと安定しなかったりもするので、複数の回線を同時に繋いで映像をそれで送って、それでクラウド上でぎゅっとまとめてテレビ局で使うっていうこともあったりもするんで。放送局も今もうLTEとか5Gのネットワークに頼っているって状況はあるみたいですね。
5G SA
どちらも免許が必要な事業で、放送局も絶対に事故にならないようにすることが責務ですから。そうなるとなかなか譲り合いだけではどうにもならないこともあるかもしれないですもんね。なかなかその辺りって皆さんきっと耳にしたことがないので、すごく新鮮な情報な気がしますね。
そういった人がいっぱいいるところで、例えばお正月の初詣で人がいっぱいいる中で、当然普通の人のスマートフォンも繋がりにくい状況っていうか、テレビ局としても中継しなきゃいけない。そこで本来5Gとかの回線を使いたいんだけど、不安定になっちゃうよねっていう時に期待されてるのが、「5G SA」と呼ばれるものです。
真の5G的な言われ方をしてますけど、そういった新しい技術によって、ちゃんとその人だけに中継するためだけにネットワークを切り分けてお届けするってこともできそうになっているので。
「優先的に送るよ」みたいな、別のサービスってことですね。
ネットワークスライシングって、多分最初の方の回で。
輪切りにしてっていう話がありました。
輪切りにして、一般の使う人をちょっと犠牲にして、お金いっぱい払ってくれる人に優先する、みたいなことができる。
無線のリソースって有限なので、それをどう効率よくやるかっていう話と、一番期待されてるのは、平等すぎるんで、例えばいわゆるIoTのセンサーみたいなものも1ユーザー扱いになっちゃうんですよね。
そういう人達がリソースを食いつぶさないように、ぎゅっとIoTの帯域を絞って、人にもっと使えるようにしましょう、とかっていう。
まあどっちかというと、そうやって本当に必要な分だけ割り当てることによって、もっと効率良く電波のリソースを使いましょうっていうのが、まずスタート。
でもやっぱりお金いっぱい払ってくれるとプレミアムサービスを受けられますよ、みたいな形にするっていうのも一つのユースケースというか、ビジネスモデルなのかなというところです。
今は使う使わないに限らず全員に広い部屋が与えられてるみたいな感じですか?
いっぱい人が入ってくるとその部屋がどんどん狭くなってくる。すごく平等な仕組みなんですよ、携帯の電波の割当。周波数をどう使うかっていうところが。
なので、それに対してこの人は優先するからいつもよりちょっと長めに使っていいですよとかっていうのが、この携帯の人はこのサービスを使ってる人ですよっていうタグが付いてるので、その人に対しては優先的に割り当てるみたいなことができるのが5G SAの技術。
それは個人宛にも開放されるものなのか、事業者とか報道向けなのか、今後どうなりそうですか?
当然法人向けがメインになってくるとは思うんですけど。ただ、本当は個人に開放して、個人も使えるようになったら面白いのかなとは思っていて。
結構お高くなる感じですか?
なかなかそこはまだ見えないんですけど。本来であればYouTuberが中継したいとかっていうのもあるだろうし。あと、オンラインでゲームやっているっていう人からすると、ゲームをサクサク動かすために、じゃあちょっとお金払うよってことはできたりするといいし。
将来的にはpovoのトッピングみたいに、使いたいときだけ1,000円払うと何時間か優先的に割り当てますよ、ってできるようになると結構面白いんじゃないのかなと思いますけどね。
たしかに位置情報ゲームとか、私もモンハンのイベントとか行ったりするんですけど、人がたくさんいる中で、ちょっと課金したらスピードが速くなるとかだったら、その日限定でも何か頼んじゃおうかなっていう気持ちにもなりそうですね。
でも、そういったプランが増えるほうが、キャリアとしても事業者としてもメリットは多そうですよね。
やはり5Gなり、5G SAとかに投資をしてるので。じゃあちゃんとそれを回収できる仕組みは何なんだっていうときに、そういったプレミアムネットワークサービス的ってのはアリなのかなという感じですし。
実際今NTTドコモビジネスとかっていうのは、5G SAじゃないですけど、ある程度安定して通信ができるっていうサービスも提供しているので、今後そういったものが増えていくんじゃないのかなと思いますね。
そうですよね、本当に混雑している会場で、ライブ配信をしなきゃいけない事業者の方もいたりしますし。そこに電波を使うってことあると思うので、その辺りも学んでいきたいところですね。
結構面白いと思いますね。
ここまでマニアックな解説をラジオ番組でするっていうことは、そうそうなさそうなので。ちょっとMobile Tech Labではこの辺も深掘りしていきたいですね。
こういうモバイルテクノロジー、絶対一般の人が触れることのないマニアックなネタ。でもそれがあると未来がどんだけ良くなるかっていうのは、是非お伝えしていきたいなと思います。
いま12月ですけど、「4月に出たワード覚えてますか?」みたいな。そういうクイズもちょっとあってもいいかもしれません。
エンディング
Mobile Tech Lab。そろそろお別れの時間となりました。石川さん、北さん、今日の放送いかがでしたか?
年末年始の話をしていたら、いつの間にかね、未来のモバイルの話になったっていうところで言うとね、非常に面白い回だったなぁと思いますし。
まだまだ5Gの活かし方ってキャリアもできてなかったりもするのでね。来年はもっと5G SAとかミリ波が活躍するといいなと思いますね。
北さん、いかがでしたか?
Massive MIMOっていうキーワードを今日出せてよかったなみたいな。これからも皆さんをおいてけぼりにするキーワードを仕込んでいきたいと思います。
時々クイズ大会もやりましょう。
